こんにちわ、さんた屋です。
レザクラ界隈では一日に一回は目にする糸の撚りの方向について考察してみます。
本格的に研究してるわけじゃないので、間違ってたら教えてください。
まず基本的な話として、手縫いの縫い目は右下がりでミシン目は右上がり、また、手縫いの糸は右撚り(S撚り)でミシン用は左撚り(Z撚り)と言われてますね。

ところが、嫁さんの裁縫箱を見たら手縫い用の糸は右撚りがありましたが、僕のレザクラ道具箱にある糸を見てみたら手縫い用でもほとんど左撚りで、右撚りは2巻きしかありませんでした。
なんで?
よくわからないので、原始的なところから攻めてみたいと思います。
ネットで真綿や羊毛を紡ぐ動画を探してみたら、どれも右撚りをしてました。
稲わらで縄を綯ってる(綯う=なう、繊維をより合わせること)動画を見てみたら、これも右ねじりになってました。
けれど、この動作をよく見ると、2束の藁はまず左撚りになりその2束が自然に絡みつくように右撚りになってます。糸と紐(綱)を混在して考えるとやばいのですが、二つめの動画は「左撚りのものは右撚りに絡む」ことの説明だと思ってください。
糸をつむぐ動作も縄を綯う動作も、世の中の多数派である右利きの人にとって無理のない方向になっており、たぶんこれは万国共通なんでしょうね。
冒頭の動画の綿糸は綿布を編むための糸(ヤーン)に相当すると思います。縫製用に使われる撚糸(ねんし、ストランド)は、右撚りがかかったヤーンを複数本からみあわせて左撚りとなったもの。
糸や繊維は18世紀から19世紀にかけた産業革命の中で飛躍的に品質と生産性が高まった代表的なもので、この撚糸の発展があったからこそミシンが生まれたと考えて間違いないと思います。ミシンの原型の発明も結構古いようですが、現代のものにつながるのは1850年にシンガーさんが発明したものですね。日本にもちこまれたのはペリーが二回目に来航したときだそうですよ。
ミシンには回転方向があるので、撚りの方向や強弱に変化があると縫えません。ミシンで使う糸は「絶対に左撚り」でないとダメ。ということで、左撚りの撚糸を前提にミシンが作られたのは間違いないだろうし、その後も撚糸は左撚りを前提にさらに材質や品質が進化したんだろうと想像できます。
ではなぜ「手縫いは右撚り」なんでしょうか? ミシンが登場するまでは当然手縫いだったはずで、ミシンが登場する前には右撚りの撚糸が常識だったのに、機械化が進む中で左撚りが主流になった・・・いや、それはないでしょう。だって冒頭で参考にした動画のとおり、糸をつむぐ動作は右撚りが自然で、それを撚糸にしたら左撚りになるわけだし、もともと右撚りの撚糸が常識だったとしたなら、ミシンを開発するときにも右撚りの糸を前提にするはず。
ん~、もしかしたら、そもそも手縫いでは撚糸は使っていなかったんじゃねーの?
という黒い考えが湧いてきます。
布と革はどちらが先にあったか?

そりゃ革だよね。

僕らの祖先は、捕らえた動物の肉を食べ、皮を鞣して革にし、それを動物のアキレス腱(天然シニュー)などで縫っていたんでしょう。 まぁ、縫ったといってもはぎ合わせる程度だったと思われますが。
それが、だんだんと装飾的な要素も出、鳥の羽や飾りの石をつけたりする人が出始め、俺はステッチで勝負するぜ的に糸をちょいと捩じってニートなステッチを演出する輩が登場したのではないか? 大昔だって多くの人が右利きだったろうから、捩じった方向もやはり右だったと思われる。運針も右利き前提に開発(っていうのかな?)されたはずだ。
そのうち「めんどくせえからあらかじめ撚っておこう」という感じになり、撚り糸が用意されるようになったと考えても不思議ではない。用意されたのは右撚りだっただろう。
ここからさらに時代が経過し、手縫いの効率を上げるために菱目打ちが登場する。その際、右撚りの糸がうまくきれいにからむ向き(左捩じりステッチ)に穴をあけるべく、右上がり穴(=右下がり縫い目)で作られた。
こうしていつしか手縫いは右下がり縫い目が常識となり、それに合わせる糸は右撚りというのが定説に。つまり、手縫い用と工業用(もとは織物用)は、まったく違う進化を遂げて今の常識にたどり着いているのではないか?
実際にレザークラフトの手縫い用糸として販売されているものもほとんどが左撚りで、ミシン用との違いは蝋が塗ってあるかそうでないか。世界中にある糸を作る機械の大多数が左撚り用だろうから、右撚りの蝋引きの糸で太さや色を取りそろえようとしたらすっげー大変なんだと思う。間違いなく高額になる。それをやってる企業さん、マジで頭が下がります。
間違いなく右下がり縫い目なら右撚りの撚糸のほうがよく締まるし、逆に左撚りの糸なら右上がりで縫うほうがきちんと締まる。
それは糸が自然に絡みたがる方向だから。デニムが履きこむと捩じれてくるのは綾織りしている繊維のねじりの向きによるものだし、Tシャツが捩じれてくるのも撚り糸を使って回転させながら編んでいるからである。
そもそも撚る目的は、綿や羊毛、麻のような短い繊維で長い糸を作るためであり(絹やポリエステルはモノフィラメントなのでそこはあまり関係ないが)ほつれや毛羽立ちを防ぐためなので、撚りは製品として縫製された後も適切に維持される必要がある。
けれど手縫いの場合はミシン縫いと違って撚りの方向が直接トラブルにはなりにくいため、ミシン用を手縫いに使っても絶対にダメとはなっていない。フジックスさんもミシン用で手縫いする場合には糸を短めに、と推奨されている。 左撚りの糸で右下がりステッチ(左撚りステッチ)をするならば、ビニモMBTのようにインボンド加工されたものを使ったり、ジルクラフトさんみたいに密なチネリをいれつつ縫うことで撚りが緩む問題は回避できる。あるいは五助屋さんが提唱するポリブレイドを使えばいい。(ポリブレイドもミクロでは織に回転方向はあるんじゃないかとおもう。リリアンみたいなもんだからね。ま、その解説はいずれ五助屋さんがしてくれることだろう(むちゃぶり))
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なお、普通に藁を綯ってつくる縄は右撚りだけど、注連縄(しめなわ)は左撚り。

(さすがいらすとや・・・ちゃんと左撚りになってる)
これは神事に使うものなので日用品(俗=右)ではなく神聖なもの(聖=左)として区別するためのようです。法事の席順は、お坊さんがセンターで喪主が右(祭壇からみて左)ってのも、盆踊りが左回りなのも、死に装束の着物を左前で着せるのも同じ理由みたいです。
ぼくはミシン縫いからレザクラに入りミシンで縫えないところが出てきたので手縫いもするようになったクチなのでミシンと手縫いが混在するのがデフォ。なので手縫いでもミシンと同じ向きに穴をあけて縫うようになり、手縫いオンリーでもその向き(逆目縫い)になってしまった、というのが今の私の縫い目です(順目で縫うときもあります)。
今後は、単に逆目とか言わずに「神縫い」とか名乗ってみようかと思います(嘘)

神縫いキーホルダー(爆)
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