こんにちわ、さんた屋です。

レザークラフトするなら革包丁は必須!・・・とは思ってなくて、カッターの方が便利なことも多いと思います。そもそも革包丁が定着したのはカッターが発明されるずっと前だし。
でも、革包丁ならではという作業もあるので、やっぱり予備も含めて何本かは持っていたいです。

しかし、手に入れてしまえば一生もの、というわけではなく、刃を折れば新品の切れ味になるカッターと違い、新品のときはギンギンに切れた(買ったままでは切れないのもありますが)革包丁もそのうち切れなくなり、いずれは砥ぐ必要が出てきます。

この砥ぎが結構むつかしくて、その悩みを減らすために「包丁研ぎサポーター」を作りました。
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これは鎬(しのぎ、刃の斜めの側)面をきちんとした角度で砥ぐことに照準を合わせた商品です。



今回は、裏をどう砥ぐか、について記事を書きたいと思います。

あわせて、革包丁に関する基本情報も整理してみました(なかなかまとまったサイトがないので)
寄せ集め、かつ、僕の理解の範囲で書いているので間違いも多々あるかと思いますので、添削&ご指摘歓迎します。

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1.革包丁の種類(刃材のこと)
2.片刃と両刃
3.裏すき
4.裏押し
5.裏すきのメリットとデメリット
6.裏すきされた包丁の延命
7.裏押しの省力化
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1.革包丁の種類
家庭用の包丁も含めて、刃物に使われる鋼材の種類は、ざっくりと鋼(はがね)かステンレスに大別していいと思います。
鋼としては、お手頃なものから順に、SK鋼、黄紙、白紙(1号、2号)、青紙(1号、2号、スーパー)といったものがあるようです。
後にいくほど硬さや切れ、持続性がよくなる一方で、(硬い分)砥ぎにくく欠けやすい特性になっており、白紙2号あたりが切れとメンテナンス性の面でバランスの取れた鋼材のようです。
ステンレスは、鋼ほどには切れや刃の付きはよくないですが、なによりも錆びにくいう点が長所とされます。モリブデンやバナジウム、コバルトなどを配合することで、硬さや粘り、刃持ちなどを向上させたものがあります。


2.片刃と両刃
一般的に「革包丁」は片刃ですが、似たような形をしてても海外製には両刃が存在します(というか両刃のほうが多い)。海外のレザークラフターさんがよく使ってるラウンドヘッドナイフなどはもれなく両刃です。
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このへんは、和包丁が片刃で洋包丁が両刃っていうのと同じだと思います。まあ、伝統的に和包丁でも両刃を作っていた地域などもあるようなので、一概には言い切ることはできないかもしれませんが。

それと、刃の構造として、すべてが鋼でできているものと、刃の部分を鋼としそれを地金で受け止める構造のものがあります。一般的な革包丁は合わせ鋼です。
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家庭用のお手軽なステンレスの包丁も全鋼で、超高級な和包丁にも全鋼(本焼きとか言われる)があります。ステンレスと鋼を合わせた合わせ鋼もあるし、そのへんははいろいろすぎるなので割愛します。


3.裏すき
片刃の包丁には裏すきをつけるのが一般的です。
裏すきというのは鎬のある面の逆側の面(平らな面、料理包丁では握って左側、革包丁では右側)の真ん中あたりに掘り込みをつけた部分のことです。
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料理用の包丁に裏すきをつけるのは、切る食材からの身離れをよくするのが主目的です。和包丁は片刃でかつ裏すきがあることにより、魚などを身崩れさせずに綺麗に(美味しく)切ることができます。
けれど、柔らかいものを切るわけでもなく、刃裏を対象物に密着させるわけでもない鉋(かんな)や鑿(のみ)にも裏すきが入れられます。
革包丁も片刃(鎬の向きは包丁とは逆)ですが、裏すきはあったりなかったりします。裏すきをしないものは「べた裏」と呼ばれています。


4.裏押し
片刃の刃物の裏面に、完全な平面部分を形成することを「裏押し」といいます。上の包丁の絵の薄いグレーの部分が「裏押し」された部分です。
「鉋は糸裏、鑿はべた裏」という言葉があります。鉋は、鉋台(本体の木の部分)の狭いスリットからわずかに刃を出して使いますが、ここからの鉋屑の排出性を高めるために、裏押しされた部分は糸のように細くあるとよい、という意味のようです(一枚刃と二枚刃では常識が違うようです)。
一方、鑿でいうべた裏は、裏すきがないという意味ではなく、裏押しする面積が広くすることをさしているようです。この目的は、穴を穿つときにまっすぐ入るように、だそうです。
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話を革包丁に戻すと、そもそも革包丁を使いはいじめたのは誰なんだろうか、とか、刃物屋さん経由で鍛冶屋さんに頼んだのか、鍛冶屋さんに直にたのんだのだろうか、どんな頼み方をしたのだろうか、という興味が湧きます。
それが、鑿を変形したものだったのか、ウナギ包丁を変形したものだったのか、はわかりませんが、頼まれた鍛冶屋さんは「片刃だから」ということで裏すきを入れて作ったんだろうと思います。
ただ、その後、必ずしも裏すきは必須ではないという考えも生まれ、裏すきのないものも多数存在するようになったのが現状かと思います。

片刃の刃物は、鎬面を砥ぎあがったら、裏返して刃裏をペタッと砥石に押し付け、ほんの数回なでて、裏に出た「かえり」をとったら砥ぎあがりとなります。

この作業は、バシッと裏の平面を決められた(裏押しを済ませた)状態を前提しているため、ちゃんと裏押しされていることや、使い込んで裏が狂ってきたときにはきちんと裏押し出来る様に修正されていることが求められます。


5.裏すきのメリットとデメリット
片刃の包丁には裏すきありが前提になってますが、切る対象物からの身離れのよさのほか、裏の出しやすさもあると思います。
裏すきのある刃物は、砥石に接する面積が少ないため、砥ぐのに時間がかかりません。ピンヒールに踏まれると超痛いのと一緒です。
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しかし、裏すきのある刃物は、砥ぎ進むと裏押しした部分が減っていき、ついに裏すきの部分に達すると刃先側に裏押しされた面がなくなります(裏切れ、糸切れ)。

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刃の中央部分はこんな感じの断面になります。
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また、裏をすくということは、必ずその部分が薄くなります。使い込んで砥ぎ進めば薄いところを使うようになります。ここを砥げばさらに薄くなってしまいます。

したがって、そもそも意図して刃厚を薄く仕立てた包丁(漉き用など切れ味重視)や、裏に使っている鋼材が薄い場合は、すきを入れることで弱点を作ることにもなるので、裏すきはある程度の鋼の厚みをもった包丁に施されることが前提とも言えると思います。


6.裏すきされた包丁の延命
では、裏すきされた刃物はそこまで砥いだら寿命(買い替え)なのか?という疑問が湧き、今はまだ残ってるけど、あと5mm砥ぎ減ったらおしまい?って不安になります。結構高かったのに・・・。

すかれた部分は物理的に鋼が薄いので、これはどうにもなりませんが、方策は二つ。
一つは、鎬からたたいて先端の刃裏を出す。
片刃の刃物は、しのぎ側からたたいて先端の刃裏をちょっと出し、再び糸がつながった状態に修正して使う。鉋や鑿はこうやってメンテナンスされながら使い込まれているようです。

のみ、かんな、裏切れ、裏出し、うらおし、などのキーワードで検索するとたくさん出てきますので、調べてみてください。

この作業、ぶっちゃけかなりめんどくさいし、むつかしいです。鎬面の地金の部分を小さなトンカチでコツコツとたたくのですが、鉋くらい広ければまだしも革包丁の額はめちゃ狭い。
下手すると刃を割ってしまいます。自分も刃先を欠いてしまったことがあるし、歪ませてしまったこともあります。

こんなふうに。まだ古傷が残ってます・・・。
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ALL-2000を買ってからは、鉛ブロックの上に包丁を置いて押し棒でじわっと力をくわえています。

でも、ピシッと整えられれば(裏すき部と、裏押し部が形成されれば)、かるく砥石にあてて数回なでるだけで、ピンピンの切れあじを発揮することが可能な刃裏になります。

もう一つのやり方は、裏を砥ぐ際に意識的に超鋭角に砥ぐようにする。これなら叩かなくてもOK。
裏すきされた面と刃先が合うような角度を意識しながら、使い込むに従って徐々に角度を深くしながら砥ぐ。その超鋭角をつけることも簡単ではないですが、その手抜き方策は次の項で説明します。

片刃の(裏すきのある)包丁を永く使い続けるのには、そこそこ刃物の扱いに慣れが必要ってことかと。あるいは、もう砥ぎはプロに任せる。決して高くないし。


7.裏押しの省力化
これまでの話で「だったらべた裏のほうが気楽に永く使えるのではないか?」となりますが、やっかいなことにべた裏は裏が砥ぎにくい(裏押しがしにくい)です。

裏を砥ぐ面積(砥石に接する面積)が、裏すきがあるものよりも広いことに加え、濡れた砥石に吸盤のように張り付いてしまうためです。おまけに、しっかり押し付ければ押し付けるほど、綺麗に砥げてれば砥げてるほど、目の細かい砥石になればなるほど、それが顕著になるから厄介です。

また、ホントにきちんと、かなり力を込めて刃先を押し付けないと、刃先よりも根本(握り)に近いほうが砥げていってしまします。
そもそも刃の厚み自体が2mmかそこいらしかないので押し付ける力でたわんでいることも考えられますし、砥石から横にはみ出した握り側が重みで下がってしまうからだと思います。

砥ぎのアドバイスをしている本や動画、ブログ記事などを見ると「まかり間違っても裏に角度をつけてはいけない」と書かれています。

が、同時に「握り側が下がらない様に意識せよ」「刃先が砥石に接するように押し付けよ」と説明されてます。

これ、事実上、刃裏も超鋭角で砥げ、と言っているのとイコールではないかと思います。

微妙に浮かせれば砥石に張り付く現象も減りますし。
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事実、前述のアドバイスをしてくださっているサイトに載っている包丁の裏の写真を拝見したり、上級者の包丁の裏を拝見しても、よ~く見れば角度が付いていることがうかがえます。

また前項の最後に、裏すきありの包丁を糸切れさせずに(叩くことなく)永く使うためには、ごくわずかに角度をつけつつ砥ぎ進めると書きましたが、これも結局一緒のことかと思います。

もちろん、大きな角度をつけるわけではなく、角度にして0.3°とかの話です。

肉眼ではわからない、ほぼ平面っていう角度だと思います。

しかし問題は、この角度をどうやってキープするか? 

ちょっとでも油断すると砥石の上にペタっと張り付いてしまい動かなくなりますし。

そんなの手先の感覚だけでは維持できません。


じゃ、どうするか? 




自分はこんな手抜きをしてます。
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画像の上、刃の根本のほうに見えるグレーの丸いのはニトフロンテープです。
レザークラフトでいうと、皮漉き機の押さえに貼って傷を防いだり送りを滑らかにするものです。
これ、めっちゃ滑りがいいのです(本来は耐熱テープですけど)。

これを刃の裏に貼ることで、安定的な角度で砥いでしまおうという魂胆です。
これにより少し浮きますので、砥石に張り付いてしまう現象もなくなります。

これの厚みは0.23mm(ニットー公称値)ですので、これを貼る刃先からの距離により、以下のような角度がつくことになります。僕は45mmのところに貼ってます。

どこに貼ると何度になるかは、計算すれば出ますが、めんどくさいので数値表でごらんください。
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裏すきのある包丁で、同じように角度を維持しようとする場合は、裏すき部分に貼ることになりますので、もうちょっと厚いものを貼らなくてはなりません。

僕の手持ちの裏すきのある包丁の裏すきの部分の最深部を実測したら0.85mmでした。
今時点こちらの包丁での裏押しには困っていないのですが、もしもこれで同じようなことをする場合には、1.1mmくらいの厚みが必要になりますので、ニトフロンテープなら5枚重ね貼りすればOKということになりますね。 カグスベールでもいいかも(コルクのクッション性が邪魔になるか・・・)。

相変わらず邪道なことやってますが、絶対にダメ、というほどでもないと思ってます。
お試しになるか、ならないかはご自身でご判断くださいませ。


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